クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「わあ。よく見える!」

「ここでピントを調節する」

「ピント?」

「焦点のことだよ」

「凄い! 近くにいるみたい!」

 リュートはベリルから双眼鏡を借りて楽しそうにはしゃぐティリスに呆れて、何度目かの溜息を吐いた。

「カルクカンです。すばしこくて、なかなか捕まえられません」

 その体にウロコは無いが表皮は爬虫類のように硬く前足がなく、その動きはダチョウを思わせる。

 体長は二メートルほどで、体と目の色は緑や赤、青や黄緑と様々だ。

「すまんが少し無理をしてもらうぞ」

 ベリルは馬の体をさすり、レキナからロープを受け取る。

「言った通りに頼む」

「はい」

「解りました」

 レキナと他の若者たちもそれぞれ馬にまたがり、カルクカンを見つめて合図を待つ。

「何をする気だ」

「あれを捕まえる」

「え?」

 あれを? ティリスは改めて群を見やった。

 とても足が速そうなんだけど大丈夫かな。申し訳ないけれど、レキナたちの馬では敵いそうにない。