クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「人間は」

 ベリルの問いかけに右下の大陸を示す。

「ここです。エナスケア大陸。海流が激しくて、僕たちには越えられません」

 海から遠い彼らの集落に大きな船など、あるはずもなく。この大陸には、長距離を飛べる飛行能力を有する生物もいないとの事だった。

「エナスケアには、ワイバーンという翼竜がいるんですけど」

 その名を聞いて、この世界にいるのかとベリルは切れ長の目を丸くした。

 想像の産物でしかないと思われていたが、こちらでは実在している事に驚きだ。私はそちら方面には詳しくはないものの、ドラゴンの眷属という事は聞きかじっている。

 なるほど、勇者を召喚しようという気にもなるか。とはいえ、私が勇者として適切かどうかは、はなはだ疑問ではある。

 闘う事なら出来よう。しかし、魔法というものを持ち合わせてもいなければ、見た事もないのだから対処の仕様がない。

 そちらは、この二人に任せるとしよう。