──視界が開けると、懐かしいとさえ感じる我が家のリビングに立っていた。

 ゆっくりと見回し、リビングテーブルに置かれているコーヒーの湯気に腕時計を見下ろす。そこから壁時計に目を移すと、かなりのずれが見られた。

 壁の時計は、不思議な目眩を覚えた時刻から十秒ほどが経過している。

「ふむ」

 あまりにも突飛な記憶ではあるが、夢で片付けるには生々しい。

 胸に輝く青い石を見やり、足元のバレルバッグのファスナーを開くと使った分だけ減っていた。

 起こりえない現象と経験は、この先に続く終わりのない生涯に彩りを与えてくれるだろう。

 手首にはめられたさざれ石に目を細め、小さく笑んでベリルは洗い場に向かった。



 END

※作中に登場するティリス、リュートの二人とスライムのポヨちゃんは観月 らんサマのキャラクターです。これらのキャラクターは観月 らんサマの著作権下にあります。