「さあ、どうぞ」

 ステムは準備が出来た召喚魔法円にベリルを促した。

 他の魔術師(メイジ)も召喚の儀式をすべく集まったそのとき、何かが崩れる音と叫びが響いてそちらに目をやる。

「どうした」

「あー。たぶん、屋根が落ちたんだと思います」

 レキナは苦笑いで答えた。

 集落は未だ残るボナパスの被害を修復し続けている。そのなかに、今にも倒壊しそうな家屋があったのだとか。

 それを聞いたベリルは少し考えて魔法円を出た。

「ベリル様?」

 首をかしげるレキナを見下ろし、小さく笑みを見せる。

「修理は大変だろう」

「え?」

 驚くレキナの後ろでコルコル族たちはわっと沸き立つ。

「いいんですか?」

「還る方法は確立されている」

 歳も取らないからね。見上げるステムの肩をぽんと叩いた。

「服は」

「このままで良い」

 戦闘服は作業に最適だ。

「ベリル!」

「やっぱりオレと別れるのが嫌なんだろ?」

「お前たちはウェサシスカに戻れ!」

 嬉々としてすがりつくマノサクスとセルナクスを足蹴にした。