──翌朝、ベリルは二日酔いで倒れて唸っているマノサクスとセルナクスに冷たい視線を送る。
リュートとティリス、そしてベリルは宴会の間にステムたちと話し合い、日が昇ってすぐ元の世界に戻る儀式をすると決めていた。
そのため、広場には召還の魔法円がすでに描かれている。
準備のあいだ、村人との別れの挨拶をしているティリスには子どもたちが名残惜しそうにしがみついていた。
「みんな。元気でね」
キューキューと泣く子どもたちに、集落を初めて訪れたときの事を思い起こす。
もう、あんな怖い獣は来ないよ。そうつぶやいて、小さな体を抱きしめた。
「ティリス」
「何?」
「こいつをなんとかしてくれんかね」
「ポヨちゃん!? ごめんなさい!」
ベリルの顔に張り付いているスライムを慌てて引きはがす。
「いつの間に出たの?」
かばんに入れたはずなのに。
「ぽよ」
心なしか寂しそうなピンクのスライムにベリルを見上げる。
「ベリルと離れたくないみたい」
困ったように小さく笑った。
──まずはリュートとティリスを先に戻す運びとなる。
ベリルが先でも良かったのだが、セルナクスとマノサクスが少しでも別れを引き延ばしたいがため必死の形相で話しかけてくるので仕方なく後になった。
「本当にありがとうございました」
レキナは召還の魔法円に立つ二人に手を差し出す。
「出会えて良かった」
その手を握り返したティリスが涙を浮かべる。次にベリルを見て駆け寄った。



