バックポケットに仕舞おうとすると何故だかミレアの視線が切なげだ。ベリルは彼女としばし見合ったあと、さらに顔をしかめて手首にはめる。
そうして安心した面持ちになったミレアを確認し、再び背を向けたベリルの腕を今度は別の魔導師が掴んだ。
「ミレア様に何か捧げ物を」
「何故そうなる」
「頂いたのだからお返しをするものだ」
半ば押しつけられた謝礼に返さなければならない意味がよく解らない。そもそも、私から渡せるものなどある訳がない。
それでも、何かを渡さなければ収まらない雰囲気に思考を巡らせる。
そこで、腰の後ろに手を回してスローイング・ナイフ(投げ用ナイフ)をミレアに差し出した。
「これは……?」
「そんなものしか無くてね」
「ありがとう」
顔をほころばせ、受け取ったナイフを眺める。



