クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「そうか」

 ベリルはそれに険のない返事をする。

 マノサクスの発言にセルナクスも魔導師たちもやや驚いた様子だが、セルナクスはしばらく考えて友の意見に同意する笑みを浮かべた。

「遺恨は残るにしても、話し合いで解決を図る事が良いだろう」

 それに頷くセルナクスのあと、ちらりとリュートに視線を送る。

「俺たちには関係の無い事だ」

「そうだね」

 ぶっきらぼうに答えたリュートにティリスは若干の驚きを見せ、笑顔で同意した。

「ありがとう」

 はねつけるような態度に、今はそれがなんと温かく感じることかと安心を覚えてミレアは深く感謝の言葉をこぼす。

「罪を許した訳ではない」

 無表情に言い放つベリルを見上げた。

「解って、います」

 視線を落とし、我々が何を償えるのかこれからゆっくり考えなければと心を固める。ふいに動きを感じて顔を上げた。

「──っあ」

 遠ざかるベリルの腕を思わず掴み、見下ろす瞳に戸惑う。どうして引き留めてしまったのか自分でも解らない。