「多くの者を傷つけ、殺めたと言ったな。それは本当なのか」

「少なくともコルコル族には犠牲者が出ている」

「そうなのですか」

 ミレアはベリルを見上げ愕然として顔を伏せる。魔導師たちは、ミレアを悲しませたと落ち着かない様子だ。

「そんなことになっていたなんて知らなかった。本当だ」

「我らの手から離れれば、すぐに死ぬと思ったんだ」

 逃げ出したとはいえ、自分たちの支配から離れた獣が生きながらえ尚且(なおか)つ、大きな被害を与えるとは想像もしていなかった。

「我々はただ、負けないために強くなろうとしただけだ」

「それがこの有様(ありさま)か」

 リュートは低く、唸るようにつぶやいた。

 多くの犠牲を払い、彼らが得たものはなんだったのか。どんなに詫びようと、命を奪われた者が帰ってくることはない。