「魔力を使う作業で疲れるのは当たり前です。月に一度とはいえ、故郷へ戻れば気も緩み愚痴くらい吐きたくなるでしょう」

「しかしミレア様!」

「我々は長いあいだ、ウェサシスカに仕えてきました」

 昔から、わたしたちへの対応も体制も変わっていません。

「そうです。であればこそ、あそこまでの悪態を吐く者は今まで一人も──」

「本当に、一人もいませんでしたか?」

 念を押すように尋ねられ、魔導師は沈黙した。

 愚痴を吐く者はいたかもしれない。けれど、強い口調で語る者はこれまでいなかったように思う。

 それが、彼の性格からくるものだと考えたこともなかった。

「大体の話は飲み込めた。ろくに確かめもせず、随分な愚行を働いたものだ」

「だ、黙れ!」

「仲間が抑圧されているなら、助けるのは当然だろう!」

 一様に返ってくる魔導師たちの声にベリルの瞳は徐々に色を失う。

「お前たちが放った獣が何をしたかを知っても、そう言えるのか」

「それは──」

 静かだが怒りに満ちた声に乗りだした身を引っ込める。

「多くの者を傷つけ、殺めた事をどう考えている」

 大儀など元より存在しない。そんなものは犠牲を正当化する理由に過ぎない。



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