「し、仕方ない」

 リーダー格と思われる魔導師が気を取り直し、右手を上げてベリルに向ける。

「少し、眠ってもらうぞ」

 口の中で何かを唱えたその瞬間、ベリルは手にしていたものを魔導師にかざした。

 ほどなくして、魔導師たちはざわめき始める。

「──どういうことだ」

「眠らないぞ」

「魔法が効かないのか?」

 混乱している今が好機だ。ベリルは素早く魔導師に駆け寄り、背後に回って首を締め付けた。

「うぐぅ!?」

 苦しみに呻いてダガーを落とした魔導師に、今度はベリルがナイフを突きつける。

「貴様!?」

「卑怯だぞ!」

「言うに事かいてそれか」

 自分たちのしたことはどうなんだとベリルは顔をしかめて呆れかえるばかりだ。

「いつの間にかすめ取った」

 リュートはティリスの無事を確認し、ベリルが持っていた物に眉を寄せる。

「使えるかなと」

 ベリルはこっそり、リュートを地下牢に閉じこめていたプレートを鉄格子から取り外していたのだ。