「双方に意見の食い違いがあるようだ」

「そのようだな」

 ベリルとリュートは静観しつつ、どうしたものやらと考えあぐねる。

「とにかく。そこの勇者、早く来るんだ」

「断る」

「は?」

 少しも揺らぐことなく返されてダガーを落としかけた。あまりの堂々たる様子に心が萎えそうになるも、魔導師は負けじと切っ先をティリスに突きつける。

「これが見えないのか!?」

 そう来ることは当然だろうなと眉を寄せた。しかし、ここで折れる訳にはいかない。素直に従う事も考えたが、彼らには魔法がある。

 近寄った途端に何かされては対処は難しい。それよりこの距離なら、隙を作ればティリスに手が届く。

 自身を盾にしての救出には彼女からまた怒られる事になるがこの際、それは咄嗟にやってしまったという事にしよう。

「人質が通用すると思──」

 言い切るより先に隣からの殺意を感じて目を向けた。

「──わない方がいい」

 鬼のようなリュートの形相を見つつも最後まで言い切ったベリルだが、何の意味もなくなったセリフに心中で盛大な溜め息を吐いた。

 魔導師たちは、リュートから放たれるあまりの殺気に心臓が縮み上がり若干の後悔を覚えた。