「一つ、提案がある」

 マノサクスが冷静になったところでベリルが口を開く。

「言ってみろ」

「左右から攻撃を頼む。なるべく真横から同時に」

「同時に?」

 マノサクスは怪訝な表情を浮かべて武器を弓から剣に持ち変える。

「少しでもタイミングがずれるとやり直しだ。何度もやると勘づかれる」

 その説明にリュートとマノサクスは互いに頷き、それぞれ左右に広がった。

「同時にか」

 口の中でつぶやいたマノサクスは、どうタイミングを合わせて攻撃するかを思案する。

 ボナパスの注意は常にベリルに向いている。おまけとまでは言わないが、その程度の認識であるオレたちに目を配る奴じゃあないだろう。

 オレは弓は得意だけど剣はセルナクスほど上手く扱えない。

 リュートってやつの強さは解らないが、ベリルはあいつを信頼しているようだ。それなら、こっちの動きに合わせてくれるよな?

 マノサクスは目を閉じて深く息を吸い込み、目を開くに合わせて翼を大きく広げた。

 すぐさま、ボナパスの注意がマノサクスに移る。リュートはその間合いを計って剣を鞘に収め一気に獣に詰め寄った。

 それと同時にマノサクスは強く翼をはばたかせ、ボナパスに突進する。真横からの攻撃に、互いの頭は左右を向く形となった。

 ボナパスが炎を吐くべく口を大きく開けた刹那──横目に見えたベリルの姿に動きを止める。