「──いやだ」

 顔を上げ、強い拒絶を示したティリスの大きな瞳からは涙がこぼれていた。ベリルはそれに言葉を詰まらせる。

「いやよ。これ以上、ベリルが苦しむのは見たくない」

「気にする必要はない」

「キャノムのとき、痛みで気を失ったじゃない!」

 気絶するほどの痛みを味わったんでしょう!? 魔法を撃てば、そのときの痛みの比じゃない。

 死なないから、ずっとそんな痛みを受けてきたんでしょう? 痛みに慣れることが無いから、気を失うんでしょう!? なのに、どうしてそこまでするの?

「もう、嫌だよ」

 死なない人だからって、あたしが平気だとでも思う?

「ティリス」

 大粒の涙にベリルは後悔を覚えた。

 私自身がそうであるとしても、苦しみを与える者に気にするなとは、(いささ)専横(せんおう)だったか。