「何故降りない」

「混んでるから」

 聞こえた会話に振り返ると、ベリルはまだセルナクスの腕の中にいた。

 なんとも複雑な顔をしているあいつ(ベリル)を大声で笑ってやりたいが、自分にも経験があるので他人事(ひとごと)のようには思えない。

 そのときの事を思い出してリュートは一人、身震いした。

「ベリル様!」

 レキナは降りてくるベリルに帰還の喜びを笑顔で伝え、それにベリルも笑みを返して預けていた武器を受け取った。

 そうして、集落はひとまずの落ち着きを取り戻す。

 ──とも言い切れない。

「あのやろう。いつまでベタベタしてやがる」

 地上に降りた後もベリルの肩を抱いて一向に離れないセルナクスに、マノサクスは苛立っていた。

 あいつ(ベリル)の何がいいのか本当に解らないとリュートは二人の様子を眺め、友情に亀裂が入りはしないかと多少は気掛かりになる。