この季節ウェサシスカはコルレアス大陸上空を横断するルートのため、行きよりも集落までの距離が近くなっている。

 三人を運ぶ者とその護衛がウェサシスカから離れていく──おぼつかない感覚に不安を抱きながらも、ベリルたちは足元に広がる世界を声もなく見つめた。

 朝陽に照らされた湖面は魔法の鏡のように輝き、草原の緑はこんな上空にも青々しい香りを届け、遠くに見える海までも神秘的に映った。

「……綺麗」

 そんな、美しい風景に溜め息を吐くティリスにリュートの顔もほころぶ。

「待て」

 何故、それほど接近する。

 ベリルは顔をしかめてセルナクスに視線を送った。

「落とすといけないだろ」

「そうか」

 これではむしろ不安定なのではという言葉を飲み込む。

 だめだ、私の意見を聞き入れる気配がまるでない。気のせいか、やたら顔が近い。いや、近いどころではない。

 明らかに抱きしめにかかっている。

「集落はまだか」

 私の見間違いでなければ、セルナクスはかなり遅れて飛んでいる。これは意図的にか。

「まだだ」

 お前ならコルコル族の位置は把握しているだろうと返され、この状況で評価されても嬉しくもない。




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