「俺が手を離すことなんてあるものか」

「そうか」

 それ以上の言葉が思い浮かばず、ベルトを仕舞おうとしたベリルの前にリュートの手が伸びる。

 しばらく見合い、ベルトを渡すとそれをティリスに手渡した。

 胸中では、ティリスを運ぶリャシュカ族に嫉妬の炎を燃やしていたであろうリュートに生温い笑みを浮かべる。

 リュートを運ぶのはマノサクスだ。ベリルを運べないことに、いつまでも文句を言っている。

 ──そうして、昨夜と同じく横抱きに抱えられたベリルはセルナクスを無言で見上げた。視線に気付きながらも、抱き方を変更するつもりは微塵もないらしい。

「これが一番安定する」

「安定を考えるならベルトを──」

「さあて行くぞ!」

 問答無用で舞い上がった。