国家機密の元に人工生命体の研究が始まり、数え切れないほどの失敗のうえに私の命はある。造り出された私にその意思がなかったにせよ、それは否定しようのない事実だ。

 私を奪うために施設が襲撃を受け、全ての人間が殺された。しかし一人の兵士の助けで、私は捕らわれる事なく自身の意思で世界を歩く機会を得られた。

 多くの命のうえにある私が、それ以上の命を救いたいと思うのは当然の成り行きかもしれない。

 それは贖罪(しょくざい)ではなく、簡単に(あがな)えるものでもない。

「最も大切だと思える者がお前には彼女であるように」

 誰かを救い、護る存在でありたいと案じている。

「私の力など僅かではあるがね」

 ひと通り話し終えたベリルは小さく笑みを浮かべる。それにリュートは目を細めた。

 誰かを救い、護る存在でありたい──それが、これまでのこいつの行動の全てなのだろうか。