「無論、それらを使用する危険性は考慮され、所有している国は抑止力としての意味を強調している」

 感情を抜きにするなら、確かに抑止としての影響力は多大だ。世界情勢を鑑みれば、国益のための所有はやむを得ないと考える者は多い。

「それが悪という訳でもない」

 やはり、善悪は常に揺らいでいる。

「随分と複雑な世界のようだな」

「何かのために動くことは変わらない」

 国のため、王のため、愛する者のため、自己のため、誰かのため──それらにはあまりにもの幅があり、全体を捉えて行動する事は難しい。

「ならば、私は己の意思で動くしかない」

 救う者のために奪った命は、誰かの憎しみになるかもしれない。それでも、救いたいと思う命がある。

 自由を手にしたときから、私には多くの命を背負う現実があった。