クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「レイノムス様の説明に偽りはない。このままいけば要石の亀裂は大きくなり、やがて砕け散る」

 ウェサシスカが地上に落ちれば、古の知識は(すた)れてしまう。

「俺たちの命でそれを阻止すれば満足か」

「え?」

 リュートの怒りを帯びた声に驚いてセルナクスを見上げると、彼は眉を寄せて視線を外した。

「ウェサシスカは上空にあるからこそ古の大戦にも巻き込まれず、その叡智で世界を支えてきた」

 この大陸を、絶対に落とす訳にはいかない。

「どれほどの犠牲を払ってもか」

 抑揚のないベリルの言葉に奥歯を噛みしめる。

「ある程度の理解は出来る」

 この世界とは関係のない命を奪うという責を負う覚悟があった事は認めよう。

「だが同時に、マノサクスの行動も間違いではない」

 互いが正しいと信じて起こしたことだ。仮に、二人に犠牲を強いていたならば、その代償は支払ってもらうつもりだったがね。

 その言葉が嘘ではない事をセルナクスは重々、感じていた。