「人間のくせに」

 目を眇め剣を払うが、僅かに体を後退させただけで避けられてしまう。チビなりに頭を使っているのかと、湧き上がる悔しさを感心にすり替えた。

 しかし、これだけの体格差なら当たりさえすればこちらの勝ちだ。いつまでも避けられると思うなよ。

「己が有利だと考えるのは誤りだ」

「抜かせ」

 セルナクスの思考を察したベリルに鼻を鳴らす。

 確かに、チビな分だけ動きは速い。それに、こいつ──マノサクスはベリルの動きに若干の警戒をしていた。

 気の迷いかもしれないが、翼を狙われているように思われて集中できない。

「何やってんだよ、セルナ」

 マノサクスは友の動きに苛立ちを覚え舌打ちをする。

 今でこそマノサクスは自由気ままな生活を送っているが、幼なじみである二人は互いに腕を競っていた時期があった。