──ティリスは何度も振り向くが、ベリルがついてこない事に不安を募らせた。

「リュート!」

 待ってと呼び止めてふと、行きにも見た要石の輝きに立ち止まる。

「綺麗……」

 間近で見ると、不思議な輝き。暖かさえ感じる。

「奴が足止めしている間に行くぞ」

「だめだよ!」

 ティリスは頭を大きく横に振った。

「仲間だもの」

 置いていけないよ!

 大きな瞳を潤ませてリュートを見上げる。

「ティリス」

 強い眼差しに小さく嘆声(たんせい)をもらす。厄介な頑固さだが、これがティリスなんだな。

「覚悟はいいか」

「うん!」

 降りた階段を再び駆け上がり、ハンドルを強く握る──互いに頷き意を決して扉を開き、剣を構えてセルナクスと対峙するベリルの姿を捉えた。

「リャシュカ族を相手に人間が敵うとでも思うのか」

「試してみよう」

 その言葉が気に食わなかったのか、セルナクスは口の端を歪め剣を大きく振り上げる。

「チビが!」

 忠告はしてやったとばかりに勢いよくそれを振り下ろした。

「ベリル!」

 あの速度では剣で防いだとしても、そのまま振り抜かれてしまう。

 しかし──

「なに!?」

 セルナクスの剣は振り抜かれる事なく、しっかりと受け止められた。




†††