「そう……ですね」

 確かに、リュートなら怒っていてもおかしくない。

「頼みます」

 きっと、あなたの説得ならば彼も聞いてくれると信じています。レイノムスは再び(こうべ)を垂れた。

「──ふざけるな」

 怒りに満ちたつぶやきがベリルの耳に届いた刹那、

「おい、あいつ」

「どうして人間が?」

 リャシュカ族たちがざわついた。

「ちょ!? ええ!?」

 なんの合図も予告もなく姿を現したリュートに、マノサクスは驚いて目を見開く。

「ちょっと何やってんの!?」

 その後ろからゆっくりと立ち上がるベリルに突っ込むものの、ベリルは特に焦りを見せることなく面食(めんく)らっているマノサクスをなだめるように軽く手を上げた。

 ベリルは、ティリスの純真さにつけ込む彼らを許せなかったのだろうとリュートの背中に溜息を吐く。

 しかし、こうも行き当たりばったりでは、こちらの対処も難しくなってくる。