マノサクスは言われたとおりに少し離れた席に腰を落とし、様子を見守ることにした。落ち着いたところで上座にいるレイノムスは、右斜めに腰掛けるティリスに向き直る。

「あ、あの」

 両手の拘束を解かれ、今はもてなされている事に戸惑いを隠せない。

「急いていたとはいえ、手荒な真似をして申し訳ない」

 腰掛けながらも深々と頭を下げた。思っていたほど怖い人ではないと解り、その慇懃(いんぎん)な態度にティリスの緊張が少し緩む。

「我々には、あなた方の力が必要なのです」

 それを確認したレイノムスは、ゆっくりと切り出した。

「あたしたちの力?」

「この大陸はいま、落下の危機に(ひん)しています。回避する方法を探っていたところ、あなた方が重要な鍵を握るという予言を受けました」

 別世界から来た者に救いを求めるなど馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれないが、ウェサシスカを地上に落とす訳にはいかないのです。