「そうだけど」

 これまでも何度か言い合いをしてオレは結局、何も言い返せなかった。それに代わる方法が思いつかなかったし、魔導師の言葉に逆らう理由も見つからなかったから。

 でも、他に方法があるかもしれないって思って、実行を遅らせたかったんだ。この世界の人間じゃないのに、どうしてその負担を背負わせなきゃいけないんだよ。

 その見返りは用意するって言うけど、そんなのおかしいだろ。

「解ったなら出て行け」

「セルナクス」

 低く凜とした声に呼ばれて振り返る。

「そこに座らせていなさい」

 五十代前半の男性は静かな口調で命令した。白髪交じりの銀の髪を後ろで束ね、立派なブラウンの翼が威厳ある人物であることを表している。

 評議長レイノムスだ。まさに、マノサクスから聞いていた通りの風貌にリュートは眉間のしわを深く刻んだ。




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