──しばらくして戻ってきたベリルは親指を後ろに示し、

「ティリスの寝床は完成した。我々はここで野宿といこう」

「ありがとう」

 気を遣ってくれたんだと気付いたティリスは、リュートとベリルに笑顔を見せた。

 そうして、体を休めるためにベリルが腰を落とそうとしたそのとき──ティリスの背後から黒い影が飛び出した。

「ティリス!」

 リュートは素早く剣を抜き、振り返ったと同時にどこからか破裂音が響き渡った。初めて聞く音に驚いていると、黒い影はゆっくり体を傾けてズシンと倒れ込んだ。

 ほんの一瞬の出来事に、誰もが動きを止めた。

 リュートは黒い影を見下ろす。三メートルはある、巨大な犬を思わせる風貌。鋭く長い爪に凶暴さが見て取れるギラついた牙──その猛獣は、苦しむ間もなく死んだようだ。

 よく見ると、その額には小さな穴が空いていた。

「一体、何が」

 リュートは目を見開き周囲を確認する。