クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「どうしたマノ」

 ブラウンの翼を持つ男がまず声を掛けた。声の様子からして、マノサクスはよくここに来ているようだ。

「何か用事か?」

 黒い翼の男はあまり仲が良いという訳ではないらしく、疑いの目を向けている。

「あー、うん。セルナはいるかな?」

「セルナクスか。もちろんだ」

「そか。ちょっと気になることがあってさ。報告したいんだけど。入っていい?」

 扉を指差し翼を小さくばたつかせる。

「報告? どんな事をだ」

 黒い翼の男は、ますますマノサクスをいぶかしげに見やった。

「えー……とね」

 困ったように頭をかき、にこりと笑う。

「ごめん」

 言って、マノサクスが両手を合わせたと同時に、彼の両側からそれぞれ影が飛び出した。

「──っ!?」

 突然のことに驚いた二人は対応が間に合わず腹を殴られ、その痛みに呻きながら背中をまるめたところで背中にダメージを受け、なす(すべ)もなく床に倒れ込む。