「見失うぞ」

 ベリルの声に、はたとして。いつの間にそんな所まで行ったんだと二人は足早に追いかける。

 当初の作戦通り、ベリルとリュートはマノサクスの連れという形をとって、とりあえず城のエントランスまで侵入することが出来た。

 城の内部は想像以上に広く、エントランスでは多くの人々が行き交っている。バロック様式に似た見事な造りに、ベリルはつい見入った。

 高い天井には煌びやかなシャンデリアがいくつも吊るされ、床だけでなく両サイドに別れた階段には赤い絨毯が敷き詰められている。

 この階段は二階へは行かず、三階と四階に別れて続いている。マノサクスは三階へ続く広い廊下を示し、そこを進むと分厚い扉がベリルたちを迎えた。

 巨木の一枚板で造られた両開きの扉には繊細な彫刻が施され、あちこちに金箔が貼られている。

 それにも関わらず、扉は思うほどの力を込める事なく緩やかに開いた。

 薄暗い空間に何かの脈動を感じたベリルとリュートは眉を寄せる。上へと続く階段を見上げると、ぼんやりと青白い光が見えた。

 再び両端に別れた階段の右側をのぼる。光は徐々に強さを増し、発光源である物体が姿を現す──