「ぽよ!」

 あっという間に鍵は開き、ベリルは飛びついてきたスライムを顔から引き剥がしてリュックに詰め込む。

「さて、ティリスはどこかな」

「たぶん、西の塔だと思う」

 女の人は牢じゃなくて、西の塔に入れられるんだ。

「塔はここよりも扱いや待遇がいいよ」

 それに、リュートは随分な差じゃないかと顔をしかめ、同時に安心もした。

「なんだお前ら! え!? ちょっ──!?」

 巡回していた看守が声を荒げて剣を抜いたとほぼ同時にベリルは疾走し、少しも怯むことなく剣も抜かずに向かってくるベリルに動転した。

「こいつ!」

 なんとか気を張り、目の前まで迫ったベリルに剣を振り下ろすけれども、それは甲高い金属音と鈍い腕の痺れに変えられる。

「──!?」

 どうしてだと見下ろすと、その腕には逆手に握られたナイフがあった。

「な!?」

 まさかそんな守り方を!?

 驚いたのも束の間、ベリルの艶美な微笑みに思わず魅入られ、押しつけられたスタンガンにあえなく失神する。