「ティリスの事でも考えていたか」

 その声に影は体を起こし格子に近づいた。

「あんた──」

「助けには来ないとでも思っていたかね」

 リュートの驚いた顔に不満げな声を上げる。そもそも仲間という(たぐい)の関係ではなかったのだから、当然かもしれない。

「別に」

 視線を外したリュートに薄笑いを浮かべて工具(ロックピック)を手にする。

「ああ。それ、鍵開けの道具だったのか」

 用意周到だなあ。

 ベリルは鍵穴を見やり、適切と思われるピックを選んでいたそのとき、

「ぽよ!」

 リュックから飛び出したスライムが鍵穴に向かって伸びていく。

「うわ!? なんだこいつ!?」

 突如、動きを見せたスライムにマノサクスは叫びを上げた。ゼリー状の固まりが不定形に動く様子は、見る者によっては気味が悪いだろう。

「なるほど」

 このスライムは解錠が出来るのか。鍵を手に入れられなかったときのためにロックピックを用意したのだが、これはさすがに予想外だ。