「ここを動くな」

 マノサクスに言って入り口の左側から見つからないように鉄柵を乗り越えて門番の背後に回り、先ほどと同じく膝の裏を蹴ってしゃがませ、今度は組んだ両手で背中を強く叩く。

「ぐふっ!?」

「なんだおま──!?」

 残った一人が言い切る前にスタンガンを腰に押しつけた。バチバチという激しい音と共に男が痙攣し、あえなく気絶する。

「うは、すげえ」

 あっという間の出来事に感心しつつ、この二人も茂みに連れ込んで縛り上げる。

 ベリルはリュックから出ようとするスライムを押し込み、扉の鍵穴に門番からふんだくった鍵を差し込んだ。

「降りたとこに看守がいるよ」

 音を立てずに階段を降りていくとマノサクスの言った通り、デスクに足を乗せて緊張感もなく鼻歌を歌っているリャシュカ族の男がいた。

 ベリルはそれを見て、まあこんなものだろうと一気に飛び出す。