「そうではない! 残りの一人だ」

「え? なぜです?」

 聞き返されると魔導師たちは互いに見合って黙り込んだ。勇者に何か用でもあるのだろうか。

「と、とにかく! 勇者はどこにいる」

「もしや、捕らえられた勇者を助けに──」

 魔導師の一人がハッとしてつぶやくと他の魔導師たちがどよめいた。

「そんな!」

「逆戻りか!」

「まさか助けに行くなんて!」

 その言動から、激しく動揺している事が見て取れる。コルコル族の人々は訳がわからず、魔導師たちの様子を眺めているしかなかった。

「戻るぞ!」

「まったく面倒なことをしてくれる」

「変に行動的だと苦労する」

 魔導師たちは悔しげにわめいて次々と消えていき、集落は一気に静けさを取り戻す。

「え、なに」

「いなくなったぞ」

「なんだったんだ?」

 卒然(そつぜん)に現れて訳がわからないまま過ぎ去った出来事に、コルコル族たちは思考が追いつかずしばらく呆けていた。




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