「じゃあオレ、用事あるから」

 マノサクスは、しまったベリルの顔を隠すの忘れてたと焦りつつ、なるべく違和感が無いように普段通りに努めた。

「ん、ああ。またな」

 互いに手をあげ別れの挨拶を交わして遠ざかる。見えなくなった所でマノサクスは立ち止まり深い溜息を吐いた。

「心臓に悪いよまったく」

 今までに無い緊張にうなだれ、額の汗を拭って頭を上げるとベリルの背中が遠くに見えてギョッとする。

「ちょ──おい!」

 ここで人間が一人でいちゃだめだってば!

「待ってよ~」

 しばらく歩くと、やけに丁寧に造られている通路が目に留まる。

 ベリルは、なるほど城に続く道かと先にある建物を(のぞ)み、さらに西へと進むと右側に林が見えた。かがり火が一定の距離で通路に沿って設置されている。

 灯す数が多いのか、暗くなる前に点灯作業を始めているらしい。リャシュカ族も人間と同じく夜目が利かないようだ。