──地下牢に向かうベリルは、マノサクスの指示を受け剣を隠すようにマントを羽織った。

 ここでは、リャシュカ族以外の種族は武器の携帯に許可が必要となっている。ウェサシスカは、あくまでもリャシュカ族のテリトリーなのだ。

「なるべく普通にしてれば、誰も気にしないと思うから」

 多くの種族が行き交うウェサシスカにおいて、人間を気に留める者は少ない。リャシュカ族にとって、人間は下級の種族だと認識されている。

「ようマノ。今日は人間がお供か?」

「あ、ああセノ。そうなんだ」

 声を掛けられ、ぎこちない笑顔で会話を交わす。

「うお。こいつはまた美人だな」

 セノと呼ばれた男はベリルを見下ろし思わず息を呑んだ。

 マノサクスがとりわけ長身という訳ではなく、彼らの平均が百九十センチと高めで人間は必然的に彼らを見上げる形になる。