「面倒な」

 あのとき、剣ではなくハンドガンを抜いていれば阻止出来たものをと悔しさを滲ませる。

 なるべくならば、この世界の住人には見せたくないという感情が先に立った。私の持つ武器は、今のこの世界には過ぎたものだ。

「コルコル族が異世界から勇者を召喚したことは、オレたちの間でも噂されてたんだ」

「え、知ってたんですか?」

「魔導師たちの仕事は、世界の変化を調べて評議会に報告することだぞ。知らない訳がないじゃないか」

 でも、まさか破損した要石の修復に彼らが選ばれるなんて思ってもみなかった。それを伝えるためにマノサクスは昼夜を問わず飛び続け、翼はボロボロだ。

「基本的に、下の大陸のことは静観するのがウェサシスカの方針だから」

 勇者の召喚には無関心だった。

「ベリル様は選ばれなかったんですね」

「そうだろうね」

 そんなレキナとベリルの会話にマノサクスは首をかしげる。

「マノサクス」

「はい」

 ベリルに呼ばれて思わずかしこまる。