「これは何の騒ぎだ」

 ベリルは鋭くセルナクスを見やると、手にしている剣を向けて闘う意向を示す。その気迫に瞬刻、リャシュカ族たちは気後れした。

「人間に構っている暇はない」

 セルナクスは言い捨てて翼を羽ばたかせ強い風を巻き起こした。どうやら、ベリルをエナスケア大陸に住む人間だと思ったらしい。

「ぬ?」

 風の相手をしている間にリャシュカ族たちはリュートとティリスを上空に連れ去っていた。

「──チッ」

 咄嗟にハンドガンを抜いて狙いを定めるも、距離が開いてしまったため諦める。

 あれはリュートとティリスの存在を把握したうえでの行動だ。どこで彼らの存在が知られたのか。

「説明してもらえるかね」

 銃を仕舞いながら、へたり込んでいるマノサクスに目を向ける。

「う──」

 見下ろすベリルの瞳は、決して優しいものではなかった。




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