「ぐっ! う」

「なに、これ!?」

 リャシュカ族は手にある錫杖(ワンド)を二人に向けて口の中で何かを唱えると、高い音が響きリュートもティリスも動けなくなった。

「何をするんです!? やめてください!」

 レキナは必死に止めようとするも、一人のリャシュカ族が前に立ちそれを阻んだ。

「コルコル族の者よ。すまないが、彼らはもらっていく」

「どういうことなんですか? どうしてリュート様とティリス様を──」

「セルナクス! やめろ!」

 初めに飛んできた青年がリーダーらしき男に詰め寄った。セルナクスと呼ばれた男は、赤い目でその青年を睨みつける。

「マノサクス。裏切るのか」

「そんなつもりは──っ」

「連れていけ!」

 セルナクスは怯んだ青年を鼻であしらい、濃いグレーの髪をかきあげる。

「うわっ!?」

 その声にセルナクスが振り返ると、仲間に斬りかかっている影を目にして苦い顔をした。しかし、見たところ小柄で強いようには思えない。