「す、すまない! 長老はいるか!?」

 翼の生えた人間が息を切らせて倒れていた。リュートは説明で聞いていたリャシュカ族をすぐに思い浮かべる。

 青年だろうか。銀色の髪と縦長の瞳孔、その目は淡い水色で百九十センチほどと長身だ。

「一体どうしたんですか?」

 レキナが慌てて駆け寄る。

「長老を呼んでくれ。話さなきゃならないことがある」

「リュート。もしかしてあの人」

「ああ。たぶんリャシュカ族だ」

 しかし、随分と急いでいる。何かあったのか。

「連れてきます」

 レキナは長老を呼びに行こうとしたが、複数の羽音に足を止め顔を上げる。

「え?」

 リャシュカ族が五人ほど空に見えてレキナは戸惑った。物資の受け渡しくらいでしか、彼らが大勢でここに来ることはないからだ。

 そうこうしているうちに、降り立った有翼人たちはリュートとティリスをたちまち取り囲んだ。その瞳は一様に険しい。

 状況は読み取れなくとも、友好的でない事は明瞭(めいりょう)だ。言葉もなく組み伏せるつもりなら、こちらにも抵抗する意思がある。

 リュートは柄を掴む手に力を込めた。しかし──