「他にもいるかもしれない」

 早く集落に戻った方がいいだろう。

「ええ!? どうしてですか!? 作られた生物なら、むしろあの一頭だけという可能性の方が高いのでは!?」

 レキナは狼狽(ろうばい)し、立ったり座ったりと落ち着きがない。

「あれが初めの一頭でなければ他にはいないかもしれない」

「初めの一頭だと、どう変わる」

 リュートの質問にベリルは目を伏せる。

「大抵は幾つもの試作を同時に行うものだ」

 もちろん、私のように成功が一体だけという可能性は捨てきれない。

「一度目の成功で満足のいくものが完成する確率は非常に低い」

 求めるものに出来るだけ近いものを生み出すため、成功したものから情報を得て試作を重ねていく。

「成功は多くの失敗のうえに成り立つものだ」

 束の間、ベリルの瞳が曇ったのをティリスは見逃さなかった。