「リュート!」

 ティリスの声にはっとする。

「あたしたちなら大丈夫!」

 聞こえた刹那、リュートは輝く黄金色の瞳を開き、風を巻き起こした数秒後──大きな衝撃がボナパスの右の頭を破壊した。

 何が起こったか解らないボナパスはうつむき、沈黙する。このまま動かなければ残った頭が砲台だ。

 魔族化を解きボナパスの動きを注視する。

 しかし──

「違ったか」

 ベリルは眉を寄せる。

 魔獣は、ゆっくりと頭をもたげてベリルとリュートを瞋恚(しんい)の目で見つめた。

「すまない」

「問題ない」

 悔しげなリュートに応え、

「これで多少は楽になる」

 けれど、同じ手は二度と通用しない。

 ボナパスは思いもしない痛みに、それまでなかった懸念(けねん)を覚える。されど、それ以上に湧き上がる怒りは抑えようがない。