「魔法の付与がなければ表皮にすらめり込まんな」

 これだけのサイズ、むしろ外す方が難しい。

 近距離で放たれた弾丸の痛みにボナパスは叫びをあげて荒れ狂う。魔獣の爪が木に当たり、その力が少しずつ弱まっているのをベリルは感じた。

「お!? ──っと」

 咄嗟にしゃがみ込んだ頭の上を、ボナパスの太い前足がかすめる。あの一撃をまともに受けていたら頭を持っていかれていた。

 攻撃をかわされたボナパスは憤慨(ふんがい)し、二つの口を大きく開く。

「リュート!」

 名を呼ぶと同時にベリルは手榴弾のピンを抜きボナパスの前に投げる。

 リュートはベリルの意思をすぐさま理解し、どちらの頭に投げ込むべきかと考慮した。いや──そんなことより、魔族化でティリスに影響が及びはしないかと逡巡する。