「──っぐ」

「ベリル!」

 ティリスは痛みに小さく呻くベリルに駆け寄った。腕を見ると、大きく裂けた傷口から止めどなく血が流れている。

 直ぐに治癒するため傷口に手をかざした。

「まったく。厄介な奴だ」

 ベリルは上半身を起こして治癒を遠慮し手榴弾を差し出す。

「え?」

こいつ(レモン)に付与を頼むのを忘れていた」

「もしかして、わざと?」

 笑って応えるベリルに唖然とし、治癒よりもそっちを優先する事に顔をしかめつつ魔法を付与した。

「出来たよ」

「ありがとう」

 言って立ち上がり走って行くベリルの腕の傷は、すでに塞がっていた。

「硬いな」

 リュートは悔しげにつぶやき、噛み殺す意思を瞳に(たぎ)らせるボナパスにたじろぐことなく剣を向ける。

 攻撃は確かに効かない訳じゃない。

「訳じゃない──が」

 蜂に刺された程度にも痛手となっているのかは疑問だ。