──いい加減、疲れてきた。
「まだか」
十数分の間、リュートはボナパスと追いかけっこをしている。もちろん、隙を見て攻撃するも、剣は硬い表皮にはね除けられる。
魔族化出来ればまだ対抗は出来るけれどしかし、ここでの魔族化はティリスたちにも被害が及ぶ可能性がある。
否、俺はまだティリス以外の人間の前で魔族化することを躊躇っている。
ベリルに目を向けると、何かを完了したのか頭を縦に振った。ようやくかとボナパスに向き直った瞬間、破裂音がしてボナパスの腰に銃弾が当たる。
ボナパスは痛みを与えたベリルを睨め付け、咆哮を上げながら疾走した。
その巨体では感じることのない細いワイヤーが勢いで弾かれるように舞い、数秒後に右脇から起こった爆発がボナパスを直撃する。
「しぶといな」
ベリルは倒れないボナパスに舌打ちし、ハンドガンで応戦する。
激しく怒りを噴き上げるオレンジの瞳にベリルを捉え、魔獣は体を揺らし再び迫っていく。



