──林と言うには、いささか木々の隙間が狭いようにも思われた。しかし、森というほどの規模でもない。
まだ朝方であるにも関わらず、差し込む陽射しは薄暗く真っ直ぐに高くそびえる樹木に気を紛らわせぬようにボナパスの姿を探す。
ヘッドセットが使えれば戦闘中でもスムーズなやり取りが可能であったがしかし、試してみればまるで機能しなかったため集落に置いてきた。
他にも使えなかった機器が多く、残念でならない。
勇者に起こる試練とでも言いたいのかと半ば苛立ち、手持ちのものだけで闘う状況はこれまでいくらでもあったと意識を切り替える。
「洞窟にいると思うか」
「どうだろう。夜行性であるなら、住処に戻っているかもしれない」
リュートの問いかけに小声で応えて辺りを警戒しながら奥に進む。