先ほどまでとはまるで違った空気をまとうベリルに、リュートは改めて彼が戦士である事を認識した。

 穏やかでいて少しも隙がない。それはリュートにしか解らない感覚なのだろう。上品な雰囲気の中に隠されている鋭く尖った気配──これほど巧妙に立ち回る奴は初めてだ。

「傷を負った場合は躊躇なく治癒を頼め」

 すっぱりと言い放たれ、見抜かれていることにリュートは視線を泳がせた。

「状況を考えて気兼ねしろ」

 どことなく自分を見ているようでなんとも言えず溜息を吐き出す。ベリルとて、自分が世渡り上手という訳ではないことは自覚している。

「どうしてそうも下手なのか」

「うるさい!」

 リュートはばつが悪くてそっぽを向いた。




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