──夜。何度目かの炎の番をしているベリルは、青白く輝く上弦の月を仰ぎ見た。

 金糸の如き髪をそよ風が揺らし、エメラルドにも似た瞳は相応しくベリルを艶美に彩る。

 一見、目新しい世界のように見えて、ベリルは眼前の風景にオーストラリアの大地を思い起こしていた。

 いにしえの精霊が宿る大地──先住民アボリジニたちが神々を生み出し、共存していた大地──見える風景は違えど、肌に感じる空気はその大陸と似ていた。

 傭兵の師であるカイルが好きだったことで、ベリルもオーストラリアという大地を愛するようになった。

 師と同じ車種を好み。彼の影響を大きく受けている事にこれまで何度、気付かされただろうか。

 彼が生きている間にこのような状況になったなら、頭を抱えたことだろう。

 私の真実を話したときも、不死になった報告をしたときも、彼は呆れて苦笑いを浮かべた。私は彼を困らせてばかりいたかもしれない。

 今ではそれも、懐かしい記憶だ。

 一介(いっかい)の傭兵でしかない、何の力も持たない私が本当に必要なのか。ボナパスとの闘いでそれが解き明かされると良いのだが──




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