「お──っと」

 引きつるティリスに苦笑いを浮かべてナイフを仕舞う。

 少女はぽかんとしていたが、我に返って頬を膨らませた。

「ずるい!」

「すまない。剣の手合わせだったな」

 つい、いつもの癖が出た。

「何がずるいものか。相手を考えろ。これが実戦なら、お前は死んでいた」

 もっと緊張感を持てとリュートが(さと)す。

「えー?」

 ティリスはそれに口を尖らせた。

 不満げなティリスから視線を外しリュートはベリルを見やる。

 こいつ(ベリル)は試合としての訓練をしたことがなく、常に実戦で勝つための鍛錬をしているんだろう。

 魔族や魔物のいない世界──相手になるのは常に人間だ。

「あんた。それに慣れていないだけなんじゃないのか」

 以前に見たときより、動きが洗練されている。