クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

 
 ゆっくりと銃身をあげ、十メートル先の岩に照準を合わせて引鉄を絞る。

 すぐさま岩にぶつかった弾丸は青い光を放ち、弾ける音と様子に威力が格段に増している事が窺えた。

「ほう」

 よく見ると岩に数センチの凹みが出来ている。

「悪しき者には効果が高いよ」

「なるほど」

 岩石は無機物であるため、そこまでの威力ではなかったのか。ボナパスはイヴィル属性だろうから、効果があるかもしれない。

「頼めるか」

 弾倉から取り出した弾薬を差し出す。

「うん」

 どうやら機嫌を直したようだ。明るく答えたティリスに笑みを返す。

「待機は回復に専念してもらうためのものだ」

「え?」

「治癒の必要はないと言ったが、相手がボナパスではそうはいかないだろう」

 これまでの魔獣と同じに考えてはいけない。単独での戦闘は危険だ。