リュートは額の汗を拭い溜息を吐いた。ベリルに目を向けると、何やら含んだ笑みを浮かべている。
「言いたいなら言え」
ベリルは突然、声を荒らげたリュートに何のことかと目を丸くした。
「ああ」
岩山でのやり取りをここでもやると思っていたのかと顔を強ばらせているリュートを見つつ、それならばと口角を吊り上げる。
「ティリス!」
「何?」
振り返ったティリスに心なしかリュートの顔が引きつっている。
「集落にいたとき、風呂場の扉を壊してしまったのだが。支障はなかったかね」
「え? ああ。あれは完成してすぐ遊んでた子供たちが壊したって言ってたよ」
「そうだったか」
振り返ると案の定、リュートが唖然としていた。
「何を言うと思っていた」
なんとも、からかい甲斐がある。
予想通りの顔つきにベリルは楽しくて口角を緩めた。
「この、クソジジイ」
いつか必ず、目に物見せてやりたい。