「な!?」

「これならどうだ」

 脇の下に手を伸ばす。

「わはははっ!? ──くっ……。う、はっ──」

「む。思ったより我慢強い。ん?」

 ふと、ティリスが二人のやり取りを眺めている事に気がつく。その目は何故かキラキラと輝いていた。

 以前にも同じような顔を見た覚えがあるなと思考を巡らせる。そうして、腕の中にあるリュートを見下ろし、ああ……と理解した。

 なるほど、耐える男の姿というのは時に美しく映るものだ。ティリスはリュートにそれを見たのだろう。

 もうしばらく喜ばせてやりたいが、これ以上はリュートが気の毒だと手を離す。すると、ティリスは残念そうにシャノフの所に戻っていった。

 荒い息を整えながらベリルを睨み付けるリュートに薄笑いを浮かべる。

「少しは笑えたか」

「ふ、ふざけるな」

 私は彼に睨まれてばかりだな。これまでの行動を顧みずベリルは小さく唸る。

「まだ何か隠しているだろう」

 矢庭に切り出され、リュートは表情を険しくした。目だけが笑っていないベリルのその瞳に絡め取られ視線を外せない。

 体が強ばっているのが解る。こいつのこの威圧感はなんなんだ。

 しばしそうして向き合っていたが、ベリルが表情を緩めると緊迫した空気はかき消え一気に脱力した。




†††