「例え許されない存在であると認識していても、自分の存在が否であるとは感じていない。それは私を造り出し、私のために犠牲となった者たち自身までをも否となるからだ」

 その瞳には強い意志が感じられ、今まで見てきたベリルとは違っていた。これが、本来のベリルなのかもしれない。

 細かな色合いは異なるけれど、リュートと同じ癒しの色をした瞳──初めて見たとき、まずその瞳に意識が向いた。

「戦わなければ救えない命がある」

 どう否定しようとも、その事実は変わらない。私にその能力(ちから)があるのなら、使わない手はない。

「だから、ベリルは戦士になった?」

「お前が奴のためにここにいるのなら。奴もまた、お前のためにここにいる。私はお前たちのために、ここに在る」

 静かに語るベリルからにじみ出る存在感に、ティリスは懐かしい感覚を覚えた。それは、遠い昔に注がれた条件などない全てを包み込む優しさの記憶だ。

 それを感じたティリスは、無意識に両手を広げベリルの体に腕を回していた。